風説の流布

不正競争防止法」で示したように、不正競争防止法第2条第1項第14号では、風説の流布を不正競争として規定しています。

以下に風説の流布について例を用いて説明します。
特許権を有しているA社が、競合企業であるB社がA社の特許権を侵害していることを発見しました。
権利者は侵害者に対して警告書を送付するのが一般的ですが、A社はB社の取引先であるC社に、B社がA社の特許権を侵害ししているから、B社との取引を止めるよう通知を行いました。

このとき、A社の行為は風説の流布となるでしょうか。

ここで、もう一度条文を確認してみましょう。

第二条
 十四 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為

条文から分かるように、風説の流布は、飽くまでも「虚偽の事実」を告知等をする行為です。
したがって、B社が特許権を侵害していることが虚偽でなければ、A社の行為は風説の流布とはなり得ません。
一方、B社がA社の特許権を侵害していなければ、A社の行為は風説の流布となり、B社はA社に対して不正競争防止法に基づく民事訴訟を提起することができます。

しかし、ここで留意する必要があるのは、A社の特許が無効になった場合にも、A社の行為は風説の流布(不正競争行為)となる点です。

このように、取引先に産業財産権侵害の警告書を送付すると、逆に不正競争防止法違反で訴えられる可能性があるため、取引先への警告は好ましくないと考えます。


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