意匠法第3条の2には、
第三条の二 意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。
と、規定されています。
非常に読みにくい条文ですので、この条文が適用される条件を一つづつ説明していきます。
先ず、引例となる文献は、本件出願の出願日よりも前に出願され、その出願後に意匠公報が発行されたものである必要があります。
すなわち、引例の出願日と公報発行日との間に、本件の出願日があります。
次に、客体的要件は、引例の図面等に表された意匠の一部と、本件意匠とが同一又は類似である必要があります。
ここで、重要なのは、引例の意匠全体と、本件意匠全体とが同一又は類似の場合には、意匠法第9条の問題となり、本規定は適用されません。
また、ここでの意匠の類似は、形態面のみであり、物品面の類否は問われません。
本規定が適用される場面としては、先願が全体意匠で後願が部分意匠、先願が完成品の意匠で後願が部品の意匠、先願が組物の意匠で後願が組物の構成品の意匠等が考えられます。
なお、先願と後願との出願人が同一の場合には本規定は適用されません。